苦い文学

未来の選挙

私は選挙制度についてはよくわからないが、このまま日本が少子高齢化を突き進み、地方の過疎化が進み、さらに東京に人口が集中していくと、将来、奇妙なことが起こりそうだ。

ひとつを除いたすべての選挙区が東京に吸収され、そのいっぽう、東京以外の選挙区はひとつに統合されてしまうのだ。つまり、日本全国東京以外はすべて同じ選挙区なのだ。

選挙になると、この選挙区の広大な領域内では、どこでも同じポスター掲示板が立てられることになる。何百キロ歩いても、同じ立候補者の顔ばかりだ。海を渡って沖縄に行っても同じだ。まるでお釈迦さまの指に出会った孫悟空のように、有権者は絶望する。

いっぽう、東京はどうだろうか。その頃には東京は日本中の人口のほとんどすべてが集中していることだろう。都内は巨大な超高層ビルに隙間なく覆われている。そんなビルが何百万とあるハイパーメガシティに、何十億という人々がひしめき合っている。

そして、その居住ビルひとつひとつが選挙区となっているのだ。立候補者もそのビルの居住者だし、投票するのもそのビルの居住者だ。

選挙のときになると、居住者たちは、自分たちが政治家を選んでいるのか、マンションの管理組合の理事長を選んでいるのか、わからなくなる。