苦い文学

許さないのは人類の罪

私は感謝します。私に再び生きる自由を与えてくれたこの社会に感謝します。

私は人を殺しました。自分でも思い起こすのが苦しいくらい残虐に殺しました。そして、私は逮捕されました。

逮捕されたとき、私にはもう希望はないと思いました。殺人犯として終身刑を宣告され、一生刑務所から出られないと考えていたのです。ですが、違いました。警察に連行されたとき、偉い人が私にこう言いました。

「今、世界では暴力の連鎖が止まらないのだ。暴力が報復につながり、その報復がさらなる報復を呼ぶ。そんなふうに仕返しを続けていたら、どうなると思う?」

「どうでしょう」と私は答えました。「わかりません」

「人間なんてひとりもいなくなってしまうよ。だからこの暴力の連鎖を止めなくてはならないのだ。では、その連鎖を止めるにはどうしたらいいだろうか」

私は何も言いませんでした。

「許すことだ。どんなに苦しくても敵の犯した罪を許すことだけが、報復にストップをかけることができるのだ」

そう言いながら、偉い人は私の手錠を外しました。「さあ、自由に好きなところに行きなさい。私たちの社会は、暴力を根絶するために、すべての犯罪者を許すことに決めたのだ」

私が外に出るための支度をしていると、警察官たちがひとりの男を連れてきました。警察官たちは偉い人に何やら報告をしていました。その男はうなだれていましたが、ふと顔を上げた瞬間、私に気がつき、ものすごい形相で睨みつけ、やがて泣きだしました。

すると、警察官たちはその人を小突き、奥の方に引っ張っていきました。ずっとその人の泣き声が聞こえていました。偉い人は顔をしかめて、私に言いました。「よく覚えておくんだよ。あの男は、自分の子どもを殺されたのだ。それで、犯人を許せない罪の現行犯で逮捕されたというわけだ。許せないというのは、この社会に暴力をはびこらせる重罪だ。きっと終身刑を言い渡されるだろう」

私は偉い人を見て、こう言いました。

「あの人が、私の犯した罪を許さなかったことを私は許します」

それから、外の世界へと飛び出しました。