苦い文学

リベラルな邸宅

私は長いあいだ、リベラルとして生きてきた。そのせいか最近、暮らし向きがとみに向上してきた。ネトウヨ貧困層とはずいぶん格差が開いてしまったが、私としてはこの格差社会をなんとかしたいと思っている。

それはそうと、経済的なゆとりができたので、私は家を建てることにした。設計は、進んだ思想の持ち主のリベラル建築家に頼んだ。

建築も長年のリベラル仲間にお願いした。環境にやさしくて、安全よりも人権第一の建設会社だ。

そして、ついにリベラル邸宅が完成した。設備は最新式で、ネトウヨがしがみついている古臭いシステムはいっさい排除してある。堅固な防犯システムも備わっていて、ヘイトや陰謀論はまさに侵入不可能。

それでいて、オープンでインクルーシブなのだ。毎週末には、リベラルな集会を開いたり、貧乏人を招いて豚汁をふるまったりして、面白おかしく過ごすつもりだ。

本当に素晴らしい住宅なのだが、住んでいるうちに重大な事実が発覚した。

それは床の上にテニスボールを置いたときにわかったのだ。テニスボールが転がっていかないではないか。

なんと家が傾いていなかったのだ。とんだ欠陥住宅だ!

「日本の右傾化を食い止めるために、家を左に傾けて建ててほしい」

私のこんなリベラルな要望が、設計の段階で先方に伝わっていなかったとは、まことにもって残念だ。