苦い文学

スタンプ

中国政府は反日教育をまったく行わないのに、不思議にも人民の間から偶発的に反日意識が盛り上がってきた。

「殺せ! 中国にいる日本人を殺せ!」

反日中国人たちは叫んだ。だが、問題はどうやって日本人を見つけるかだ。

「日本人どもはみな中国人に紛れている。日本関係の施設であることを知らせる表示は隠されたし、子どもたちはみなランドセルの代わりに人民カバンで学校に通っている。どうやったら日本人だとわかるだろうか」

するとひとりの反日中国人が立ち上がった。

「日本人はみなスタンプが好きだ。駅でも名所でもどこでもスタンプが置いてあって、これをみると紙の切れ端にポンと押さずにいられないタチなのだ。だから、スタンプを偶発的に道に落としておくのはどうだろうか。日本人ならば必然的にこれを拾わずにはいられまい」

「よし、さっそくスタンプを用意しよう。だが、絵柄はなにがいいだろうか」

「日本の神社やポケモンならば、日本人は飛びつくだろう」

「待て!」と別の反日中国人が言った。「反日の我々がそんなものをスタンプには使えない。愛国的中国人ならば中国のスタンプを使うべきだ。たとえば毛沢東主席などどうだろうか」

「いや、そんなものでは日本人は引っかからないだろう」

「では、万里の長城は?」「成龍は?」「パンダは?」「紫禁城!」「ジャック・マー!」……

議論は幾晩も続き、ついに意識朦朧となった反日中国人たちは、気がつくとなぜか「漢委奴国王印」を TEMU に出品していた。