ジョニー・サートリスさんは外国人だ。日本に住んでもう10年以上なんだ。日本語も上手。上手だとはいっても、ときどき「素材フリー」が「惣菜フリー」に聞こえるような発音の間違いをしたりするけど(そのせいで僕たちは近所のスーパーに押しかけたんだ)。
サートリスさんは大の日本通だ。日本中あちこち旅していて、僕たちより詳しいくらい。それに日本食も大好きだ。寿司、天ぷらなんて特別な料理じゃなく、肉じゃがや焼き魚といった普通の日本食がお気に入りなんだ。梅干しやらっきょうを自分で漬けてるんだって。
そんなサートリスさんにもひとつだけ食べられないものがある。それは納豆。本当にきらいみたいで、納豆の話をすると、いかにもいやそうに眉をしかめるんだ。
「サートリスさん、納豆を食べてごらんよ、きっとおいしいよ」
「絶対にいやです」
「そんなこといわないでさ」 私たちがこんなふうに言い張ると、彼はいつもこんなふうに答えるんだ。
「私ははじめは納豆が大好きでしたよ。でも、日本人に会うたびに『納豆は食べられますか』と聞かれるのにすっかり食傷してしまい、見るのもいやになりました……」