苦い文学

奪われた仕事

AI が誕生したとき、喜びと驚きに沸く人々は、世界の片隅でこうつぶやく声を聞いたように思った。

「喜んでいられるのも今のうちだ。そのうち、お前たちの仕事は AI に奪われるぞ」

だが、人々は気にも留めなかった。自分たちの仕事は特別なので、AI にとってかわられることなどないと考えていたのだ。

しかし、AI が進化するにつれ、少しずつ、仕事が奪われていった。はじめは簡単な作業、そして徐々に複雑さを増し、人間のように話すことも必要な仕事も、AI はモノにしていった。

だが、それでも人々の多くは慌てなかった。「仕事を奪われるなんて、結局のところ自業自得さ」などと突き放していたからだ。

そして、これらの冷酷な人々も泡を食うときが来た。日増しに強力になってくる AI にとうとう仕事を奪われてしまったのだ。

人々はついに無職となった。労働を失った人々は、いま、することもなく街角に潜んでいる。そしてときたま通りかかる AI をカツアゲして、少しでも仕事を奪い返そうとしている。