苦い文学

トハンさん

今日、入管から電話がかかってきた。私が在留許可延長の保証人を引き受けている関係で、電話をかけてきたというのだ。

こうした保証人は頼まれれば引き受けるので、入管から電話がかかってくることはなくはない。もっとも、最近は少ないが(ちなみに、こうした場合の保証人にはいかなる義務もない)。

入管の担当の方が言うには、私がビルマ人の「トハンさん」の保証人になっている、というのだ。

「トハンさん?」 覚えのない名前だ。私は必死になって似たような名前を頭の中で探すが、出てこない。「トハン、トーハン、トゥーハン、ハントゥー……」

だが、ふと思いついて尋ねてみた。「すいません。スペルをお願いできますか?」

担当の方は「ええと、T、H、A、N です」

「ああ、タンさん!」 タンさんなら確かに7月に身元保証人のサインをした。私の古くからの友人だ。

なにが間違いだったかというと、入管の方は「THAN」を「トハン(t-han)」と読んでいたのだ。だが、あの国連事務総長を務めた U Thant とウ・タントとするように、ビルマ人の名前のローマ字表記の「th」はタ行にするのが慣例だ。

もっとも、入管はいろいろな国の名前の人を相手にするから、すべての約束事を知るなんて無理だろう。なので、そんなことで腹を立てはしないが、この「読み間違い」のせいで、私は「トハンさん」なるあやしい人物が勝手に私の名前を騙ったのではないか、と一瞬、想像すらしたのだった。