私たちの街は騒然となった。ひとりの男が繁華街のビルの4階の窓から今にも飛び降りようとしていたからだった。
男は窓の上に乗り、ギリギリまで身を乗り出している。通行人たちはビルの下に集まり、ヒヤヒヤして見守った。「飛び降り自殺だ!」と誰かが叫んだ。すると別の野次馬が怒鳴った。「違う!」 見るとビルの男は何やら大声で叫んでいる。「三島由紀夫だ!」
だが次の瞬間「なんだ!」と人々は困惑した。ビルの男が猫の耳をつけて、招き猫のように踊りだしたではないか。そして、猫の真似をしながら、窓の外に飛び出した。「あぶない!」 誰もがそう思ったが、男は踏みとどまった。そして、再び窓の上に乗ると、大声で叫んだ。「がおーん」 猫ではない。虎だったのだ。
その雄叫びの最中、ビルの男の背後から手が伸び、後ろに引きずり下ろした。警官たちが無事保護したのだった。
しばらくしてこの人騒がせな男の動機が明らかになった。
「日本の子どもたちに夢と希望を与えたかったのです……中国とか豊かな国にしかない飛び出る3Dビジョンも、知恵と勇気と工夫があれば、日本みたいな貧しい国でもできるんだよって……」