みなさんのなかにポール・マッカートニーの「The Long And Winding Road」を聞いたことがないという方はいらっしゃらないのではないか。ちなみにこんなふうに始まる歌です。
The long and winding road that leads to your door will never disappear.
(あなたの扉へと導いてくれる長く曲がりくねった道。それは決して消え去りはしない)
これはなんの歌でしょうか。人生の歌、そう考える人もいるかもしれません。いや、信仰の歌だ、そういう人がいてもおかしくないでしょう。だが、間違いなのです。この歌はずばり「道の歌」、そう言っていいでしょう。「ポール・マッカートニー、道を歌う」なのです。
こういうと、小ざかしげにしゃしゃり出てくる顔が目に浮かびます。「おや、ご存知ないとは残念ですな。この曲の道というのは、人生の隠喩、メタファーでして、レイコフによれば……」
おやめなさい! 隠喩だか肝油だか知りませんが、こっちには証拠が揃っているのです。
証拠① ポールが書いた道に関係する歌。
Penny Lane(言わずと知れたこの名曲はリヴァプールのストリートの名前です)
Why Don’t We Do It In The Road(『ホワイト・アルバム』所収。その名の通り)
Lovely Rita(『サージェント・ペパーズ』所収、meter maid、つまり駐車違反取り締り係の婦人警官の歌です。meter maid の現場はどこでしょうか? 道なのです)
証拠② 道を前提としたポールの曲。
Golden Slumber(『アビイ・ロード』所収。“Once there was A WAY to get back homeward” という歌詞から始まります)
Get Back(『レット・イット・ビー』所収。「もといたところに帰る」には道が必要です)
She’s Leaving Home(『サージェント・ペパーズ』所収、「家出する」にも道です)
Fool On The Hill(『マジカル・ミステリー・ツアー』所収。バカも丘に登るには道を通ったはずです)
証拠③ ビートルズを道に巻き込むポール。
Abby Road(これぞビートルズが世界に先駆けて完成させた「道のコンセプト・アルバム」です!)
Magical Mystery Tour(ポール発案のこのツアーでは実際に道が利用されました!)
証拠④ ポールの道への想い。
Here There And Everywhere(『リボルバー』所収。ここ、そこ、そしてあらゆる場所をつなぐのは「道」であり、それと同時に、ここ、そこ、そしてあらゆる場所にあるものこそ「道」である、という融通無碍にして円満至極なる道の境地……)
もう、お分かりいただけたでしょう。ポール・マッカトニーこそは、道に取り憑かれた狂気のミュージシャンだったのです!