私たちは『天国』に入るとき、この世の驕りを捨て去らねばならない。炎天下のなか長時間、行列で待たされてたとしても、文句ひとつ言ってはいけない。喜びを感じる従順さを獲得すればするだけ、前進できるであろう。
『天国』入り口では、徹底した身体検査が行われる。ここで抵抗する者に『天国』の自動ドアは決して開かれない。私たちは身につけたものを素直に放棄していく。携帯電話、イヤホン、無駄口、反抗心……そして大金が財布ごと。
『天国』に入るや否や、私たちは手錠と縛めによって自由を奪われる。いや、喜んで差し出す。『天国』の秩序に自由は不要なのだ。そして、目隠しで目を、さるぐつわで口を覆われる。沈黙が私たちの心を清め、悦びが湧き上がってくる。
私たちは乱暴に椅子に座らせられる。少しでも抵抗したり、沈黙を破れば即刻退場だ。そして、身じろぎせずに座る私たちの目の前に、『天国』特製ラーメンが運ばれてくる。
一瞬、ほんの一瞬、醤油スープの香りが私たちの鼻を刺激する。目も口も封じられた私たちにとってそれがただひとつの許された食事だ。というのも、ただちに私たちは『天国』の店内から追放されるから。ロットの時が、回転の時が近づいたのだ。
そう、ロットの時が、回転の時が近づいた。店なる主は私たちに無言でかく告げられる。
私たちは満たされて帰宅し、食事に取りかかる。