毎食、ご飯を10杯食べる人がいるとしよう。その人が、どういうわけか、一食に1杯しか食べなくなってしまった。そして人々はこういうのだ。
「あの人は少食になった」「少食化だ」
だが、もともと食べ過ぎであったのだから、減ったとか、少なくなったとか、そういう問題ではない。むしろ、本来的な量になったのだから、平常化と呼ぶべきだ。
現代日本の人口問題もこれとまったく同じだ。ことあるごとに「少子化少子化」と言い立てるが、いったいなにと比べて少なくなったというのだろうか。
「それはもちろん子どもがたくさん生まれていた時代、たとえばベビーブームのときだ」 そう反論する人もいるかもしれないが、むしろその時代のほうが異常で、生まれすぎていたのだ。本来生まれるべきでない子どもたちが生まれる、というのは異常な状態だ。これがいま、何十年もかかってようやく、平常化されようとしている。
だから、まともな人は少子化などという言葉を人前では使わない。これが平常化であることにとっくに気がついているからだ。それがわからずに、少子化だの、日本滅亡だのといま騒ぎ立てている人々は、平常化以前の生まれすぎの時代に生まれてしまった、本来生まれるべきではなかった人々にまちがいない。