韓国のドラマは日本のドラマよりも話数も多く、時間も長いせいもあって、キスシーンもたっぷりだ。これが好きな人もいるが、物語の筋にはほとんど関係ないので、私はあまり関心がない。
ひとりでお昼を食べながらドラマの続きでも見ようと思って再生すると、キスシーンが始まる。そして、私はキスシーンのあいだに食べ終わってしまうのだ。人のキスを見るだけで終わってしまった食事が、消化や栄養摂取などの点で問題ないかどうかはわからない。だが、ややむなしいことは確かだ。
ドラマではキスシーンはしばしば最後の場面にある。キスシーンからエンディング、次回の映像へとつながっていくのだ。なので、この最後のキスシーンはきわめて長い。5分、7分、いや10分かもしれない。
タイパ世代なら早送りするかもしれないが、私の世代は早送りすると命が縮むと教え込まれてきた。なので、私にできることはといえば、その間を利用して、家事をしたり、トイレに行ったり、買い物に出たり、市役所で住民票を取ったりすることぐらいだ。ただ、すばやく動けば、韓国に行って帰って来れる可能性もある。
なんにせよ、用事を済ませた私は再び画面の前に戻る。エンディングも、スタッフ・クレジットもとうに終わって、自動で再生された次のエピソードは、オープニングが終わりかけるところだ。
ちょうどいいタイミングだろうか。キスシーンをうまくやり過ごした、と考えていいだろうか。いや、早すぎたというべきだろう。なぜなら、韓国ドラマでは、キスシーンで終わったエピソードの次のエピソードは、必ず同じキスシーンから始まるから。