苦い文学

未来における誕生(1)

とある理由により、はるか未来へと飛ばされた私は、現代に帰る方法を探して、今日もまた旅を続けるのであった。

暗い森を抜け、素朴な集落にたどり着いたとき、私は人々のざわめきに気がついた。集落の中に入ると、にぎやかな宴の真っ最中なのだった。私は、楽しげに飲み食いする人々に近づいて尋ねた。

「これはいったいなんの祭りですか?」

すると、ひとりの男が「ようこそ、客人」と私を招き入れ、食事と酒をすすめた。空腹だった私が食べ始めると、男が質問に答えてくれた。

「これは祭りではありません。今日は私たちの村に久しぶりに赤ん坊がやってきたのです」

「なんとおめでとうございます。そのお子さんが健やかでありますように!」と私が盃を掲げると、人々は喜んで酒を飲み干した。

そのとき、私たちのテーブルに、小柄な男がやってきた。男は酒器を手にしていて、私たちひとりひとりに酒を注いで回るのだった。人々は小男に注いでもらうたびに「おめでとうございます」とか「元気に育ちますように」と声をかけ、その度に男は頭を下げた。

小男はやがて私のところに来た。私は彼に酒を注いでもらいながら、お祝いの言葉を述べ、こう付け加えた。

「お子さんの誕生とともに、あなたもまた父として誕生したのです。これもすばらしいことではありませんか」

すると、小柄な男はひどく呆れたような顔で私を見つめるのだった。