黒鍬市とジェファーソン市が姉妹都市になったのは、5年前のことだ。それ以来、2つの市は、文化や経済の交流を行ってきた。
黒鍬市の小学校では、ジェファーソン市のことを学び、市の式典にはジェファーソン産の乳製品が展示・販売されたりした。また、ジェファーソン市でも、黒鍬のいちょうが植えられ、特産のさくらんぼの加工品が市民の食卓に上ったりした。
そして、3ヶ月前、ジェファーソン市を訪れた黒鍬市の後藤市長一行が、バーデン市長に出迎えられ、両市の交流の発展について意見交換が行われた。その後に催された歓迎会で、両市長の取っ組み合いのケンカが始まった。
このときから、黒鍬市とジェファーソン市は断絶関係となった。激しい非難の応酬が繰り返され、やがて黒鍬市はさくらんぼの禁輸という経済制裁に乗り出した。これに対しジェファーソン市議会も黒鍬市へのチーズの提供禁止を全会一致で決定した。
ジェファーソン市は「黒鍬市在住のジェファーソン市民が迫害されている」と国連に訴え、黒鍬市民は「事実無根」と激怒した。両市の緊張はますます高まった。
そして、ついに犠牲者が出た。黒鍬市の繁華街で爆弾テロが決行されたのだ。黒鍬市民はジェファーソン市の犯行だと騒ぎ出し、同市出身の一家全員を捕まえ、辱め、なぶり殺した。
ジェファーソン市はただちに黒鍬市に宣戦布告し、両市は交戦状態に入った。
さて、困ったのは両国政府だ。地方自治体の紛争により、たがいの友好関係が損なわれることがあってはならない。それぞれの政府が、調停のために介入をはかった。
どちらも「身内の問題に口を出すな」と拒絶するばかりだ。