その絵はたぶん古い雑誌の1ページだと思われた。もっとも何の雑誌かはわからない。
片面は文字がびっしり印刷されている。内容についてはここで触れるに値するものはない。そうした類の低俗な雑誌だったのだ。
絵があるのはもう片面のほうだ。その絵は物語の挿絵のようだが、肝心の本文はない。
まるで西洋の古城のような壮麗な室内が描かれている。食卓がしつらえられていて、豪華な料理が並んでいる。着座しているのは、この屋敷の主人らしき威厳ある男だ。その顔はまるで冷酷な軍人のようだ。彼は鋭い目つきで、前に座る若者を見つめている。
その若者はといえば、主人の背後にある大きな窓を見つめている。顔が驚愕と恐怖に歪む。窓の外の闇を稲光が切り裂き、そしてその雷光を背景に、奇怪な亡霊が出現し、室内を、いや主人を睨んだ。
亡霊の眼差しは憎悪に満ちている。その戦慄すべき顔は主人にそっくりだ……。
これはいったいどんな怪奇小説の挿絵だろうか? 興味を感じてなおも眺めていると、紙の下部に消えかかった文字があるのに気がついた。
苦労して読み解くと、絵の説明であることが判明した。こう書かれていたのだ。
「絶対にぶれない将軍の館に、将軍のぶれた部分が亡霊として現れた!」