遠い異国の街角で、日本人が刺殺されたとき、私たちは激怒した。なぜなら、その国は反日国だったし、じつに卑怯なやり方で日本を陥れようとしていたからだった。
「反日国家は許せない!」 私たちは叫んだ。「日本人を守れ!」
「このような日本人に対する迫害がまかり通るとは恐ろしい国だ」「こんな国はただちに潰すべきだ!」 なかには「日本人を守るために派兵すべきだ!」とまでいうものも現れた。
私たちの怒りは政府に向けられた。「どうして政府は毅然とした対応をしないのだ!」「弱腰の政府め!」「あの政府はとっくに外国人に支配されているのだ」
私たちはついに直接行動に出ることにした。 SNS でデモを呼びかけたのだ。「国会議事堂に集まり、それから敵国の大使館までデモ行進だ!」
集結した私たちは、思い思いのメッセージを掲げ、激しい言葉を叫びながら、東京中を歩いた。途中、私たちは敵国の人間が歩いているのを見つけた。親子のようだった。私たちが罵詈雑言を浴びせかけると、慌てて逃げていった。いい気味だ!
私たちが敵国大使館へと意気揚々と「進軍」しているとき、新たなニュースが入ってきた。
日本人の刺殺犯が捕まったのだ。ニュースによると、特定の国籍を狙った犯行ではなく、無差別殺人だったという。
「なーんだ、無差別か」「反日ではなかった!」「無差別ならいいよ」
私たちは解散して、帰宅した。