苦い文学

退去強制

外国人だと間違われた日本人が入管に収容されたという、信じがたいニュースを聞いた。

吉田というその男性は、職務質問で外国人だと決めつけられ、不法滞在者として入管に連行されたのだという。吉田さんは免許証や身分証などを見せて日本人であることを訴えたが、偽造だと一蹴され、粛々と手続きが進んだ結果、とうとう退去強制令書が出されたのだという。

しかし、日本人をどこに強制送還できようか。そんなわけで彼は入管の収容所に移されたのだという。

だが、さらに驚くべきは、入管収容所には、吉田さんのほかにもたくさんの日本人がいたということだ。

それらの日本人たちは、入管の職員をはばかって、チャンとかミンとかアリとかヤンとか互いに呼び合っていたのだが、吉田さんが日本人だと知ると、本当の名前をこっそり教えてくれたのだそうだ。

さて、吉田さんは、幸運にも入管から出ることができた。その窮状を知った知人が方々に働きかけてくれたのが功を奏したのだという。

今回の出来事について、ニュースでは弁護士はこう指摘していた。

「日本人を外国人だといって、外国人にのみ出される退去強制令書を使って日本から排除しようとするケースがたびたび起こっています。これは退去強制令書が悪用されているといっていいでしょう。このような悪用がなくなるように、日本人を面倒な手続きなしにそのまま国外退去処分できるような枠組みを作るべきです」