日本語教師をしている友人がこんなことを言った。
日本の社会が急激に変化しているのか、それとも日本語教科書の著者の考えが古臭いのか、わからないのだけどね。日本語のテキストはどうにも時代遅れで、使う側が恥ずかしくなるようなものもあるんだ。
たとえば、男女の会話がよく出てくるんだけど、そこでは、海とかデートとか、遊びに連れていってくれとせがむのはきまって女性で、仕事で忙しいからといって断るのはきまって男性なんだ。
けっして古い教科書じゃないんだ。今でも普通に使ってるやつだ。しかも同じことは他の教材にだってある。ようするに、教科書が時代の変化に追いついてないってことだ。それは仕方がない部分もあるのかもしれないけど、「男は働き女は遊ぶ」というような偏見を教える身にもなってほしいんだよね。
それで、もしけっして古びない教科書があったらどうだろうかと考えたんだ。遠い未来の進んだ世界、誰もが自分らしく生きられるようなユートピアで、平等で公平な日本語会話が繰り広げられるんだ。そんな未来の教材だったら、これからさき何十年も、いや何百年も時代遅れになることなどないだろう?
熱意ある友人はさっそくこの「未来の日本語教科書」の実現に向けて動き出した。だが、そう遠くない将来、日本語話者がゼロになるらしいということで、計画は頓挫した。