苦い文学

Fラン・ザ・ワールド

日本人はバカが勉強するのがきらいだ。すぐ「手に職をつけろ」と言い出す。それは、バカに勉強ができるわけないと思っているからだし、バカに勉強は必要ないと思っているからだ。バカが知識をぐんぐん増やしていると、あたかも環境破壊が起きているような気がするのだ。

だから日本人は、Fラン大学だのなんだのとおかしなことを言い出して、大学を目の敵にするようになった。日本人があまりにもFラン大学を憎むので、政府はFラン大学を潰すことにした。支持率回復のチャンスと見たのだ。

そして、ついに日本からFラン大学がなくなった。政府は完璧を期するため、ついでに早稲田大学も潰してしまった。よくみたらFランだったからだ。

そんなふうにじょじょにFランらしき大学もなくなっていき、残った偏差値 90 の大学に、ほんの一部の天才だけが通うようになった。日本人は「とうとうフランス流のエリート教育が実現した」と喜んだ。

そのいっぽう、日本人はまるで勉強しなくなってしまった。なぜなら勉強しても意味がないからだ。大学で勉強したいと思っても、進学先がなかった。日本人たちは「日本は職人を尊敬する尊い国だから、手に職をつけるべきだ」と誇らしげに勧めたが、じつのところ、みんながみんな手に同じ職をつけたら、それはもはや手に職をつけたとはいえなかった。

そんなわけで、若者たちはもはや手に職をつけるのも諦めて、訪日外国人を騙したり、そのポケットから小銭をくすねることだけに集中するようになった。麻薬の売人と女衒とテロリストが憧れの職業になった。

じつはそのとき、日本の周囲の国でこんな声が聞かれるようになっていた。「民度の低いFラン国家は潰してしまおうではないか」

日本のエリートたちは、こんな声は無視することにした。また、普通の日本人、つまりFラン民族には、自分たちが何を言われているのかまったくわからなかった。というのも外国語を勉強するとスパイだと疑われるようになったので、外国語を解する人などとうの昔にいなくなっていたのだった。

そして、日本を取り巻く外国が、この、日いずるFラン国家とFラン民族を征伐しようと準備を進めていると、宇宙から異星人が飛来し、遠くの空から地球の様子を観察した。

「これはFラン星だ」

といって、宇宙の東大級の武器で地球を吹き飛ばすと、飛び去っていった。