苦い文学

日本の解決法

子どもや高齢者、病人に対する虐待が後を絶たない。しかも、加害者は保護者や介護者・教師など、守るべき立場にある人々なのだ。

どうしてこんなことが起きるのだろうか。そしてどうして年を追うごとに増加しているのだろうか。そんなにひどい人間たちが増えているのだろうか。

「そうではありません」と識者は語る。これらはすべて人手不足に起因するのだ、と。つまり、働き手が少なくなり、それにともない仕事量が増えると、ストレスが増大する。そしてこのストレスが一定のリミットを超えると、人々はこう考えるようになる。

「自分はこんなにつらい思いをしているのだから、これくらいしてもいいじゃないか」

そんなふうにして、虐待、盗撮、性暴力がはじまっていくのだ、と。

ならば、人手不足を解消しよう、それが根本解決だ。だが、ことはそう簡単ではない。識者はこう語る。「労働力不足解消のためには、移民を増やすしかありません。ですが、国籍や民族による差別が横行し、さらには経済的に没落しつつある日本で働きたがる外国人などいないのです」

つまり、もう手がないのだ。「だが、道はあります」と、識者は語る。「それは、テクノロジーを活用することです。ロボットが導入されれば、ストレスでギリギリの精神状態の人は救われ、虐待もなくなっていくことでしょう」

そこで、労働力不足解消のため、働くロボットの開発が進められた。だが、仕事を奪ってしまうのではないか、という根強い懸念もあり、結局、虐待専用ロボットが完成した。

丈夫で、よほどの虐待でないかぎり壊れない。