苦い文学

Harujongil

日本のシティポップは世界中にファンが多いとのことだが、なかでも、韓国の音楽界に与えた影響は大きいようだ。その結果、韓国でも、多くのすぐれたシティポップが生み出され、さらにはそのムーブメントが日本に波及して、シティポップ再評価へとつながっている。

最近、Apple Music に「韓国シティポップ」というプレイリストがあるのをみつけ、たまに聞いている。すでに知っているミュージシャンもいれば初めて知るのもある。これまで知らなかったもののうちで、とくに気に入ったのが、Soetaiji and Boys(ソテジワアイドゥル)の「In the Time Spent With You」と Jazzyfact の「Harujongil(하루종일、一日中)」だ。どちらも 80 年代のイギリスのインディーポップの感じがしてとてもよい。

「In the Time Spent With You」は 1992 年の曲で、まさにその時代の曲という感じがする。ところが、同じように 80 年代の雰囲気の濃厚な「Harujongil」は、調べると 2017 年の曲なのだ。Youtube には MV があり、250 万回近く再生されている。

私はこの曲がそんなに最近の曲であるということにどうにも納得がいかなかったので、Youtube の韓国語コメントをわからないながら見ていると、80 年代の曲のカバーである可能性が浮上してきた。

そこで原曲を聴いてみようと思い、「Harujongil」で検索したが、違う曲が出てくる。次に、Apple Music の「Harujongil」のクレジットを見ると KADOMATSU TOSHIKI とある。さらに調べてみると、Jazzyfact がこの曲を含むアルバムをリリースしたときの記事が出てきて、そこから「原曲」が角松敏生が杏里に提供した 1982 年の「Last Summer Whisper」だということがわかった。

もっとも「原曲」とカッコづけにしたのは、「Harujongil」は「Last Summer Whisper」のバッキングトラックを利用しているだけだからだ。メロディそのものはより抑えた渋いものになっている。それがとてもかっこよい。

いずれにせよ、原曲の「Last Summer Whisper」もすごいし、その雰囲気を見事に利用した「Harujongil」もすごい。また、80 年代臭をちゃんと嗅ぎだした私の鼻もすごいではないか。