苦い文学

計画殺人(4)

「チャンスとはどういうことだ」と尋ねる署長に、吉田刑事は弾むような声で答えた。

「それはもちろん署長がもっともっとふさわしい地位に登るためのチャンスですよ! だって、この事件も署長の指揮のおかげで解決したのですから!」

「う、うむ、そうだな……」とまんざらでもない顔つき。その顔に向けて吉田刑事が次なる言葉を放った。「そこで署長の評価がもっともっと上がるような計画を立てたのです」

「計画と!」

「ええ、まず、私たち部下が署長の業績をアピールする文書を警視総監に送るのです。すると、間違いなく警視総監は私たちの署を訪れることでしょう。これでもう署長の知名度はぐんと上がります」

「そ、それでどうするのだ!」と署長は興奮を隠しきれない。

「もちろん、その次の計画も立てています。署長がこうしてああすれば……その計画は……」

こう吉田刑事が計画を詳細に開陳すると、署長の目はギラギラと輝き始めた。「……計画通りに行けば、署長は次の警視総監に……」という吉田刑事の言葉に、署長の口からは呻きとも喘ぎともつかない音声が噴き出た。

「さらには、勲章を……」 この一言で署長の目はクワッと見開かれ、妖しい光を放ち出した。そして、吉田刑事の「さらに、皇族の側近として仕える計画も……」という発言がトドメとなったものであろうか、口から泡を溢れさせながら、署長は卒倒した。