「計画?」と吉田刑事は思わず聞き返した。
「計画って、Aがさ、釣りの計画を立ててたのだよ。それだけだ」
「それが、『世界が俺のものだ』というのとどうつながるんでしょうか」
「いや、まったくAもバカなやつでな。釣りの計画が、釣り堀の計画になってしまったのだ。そっちのほうが釣れるといって。そしたら、今度は魚の養殖場を作ろうってことになってな。で、その養殖場が儲かるのだ。計画通りにいけば。じゃあ、その資金で政治家になろう、日本のトップに上り詰めよう、その次は世界にうってでる計画だ、などということを、まあ、雑談していたわけだ。たわいもない話だ」
「ほほう」と吉田刑事は身を乗り出した。「確かにたわいもないです、たわいもないです。で、そこで、Aさんが……」
「ああ、そうだ。急にね。……もういいかげんにしてくれないか。こっちは忙しいのだ」
吉田刑事はBの家を後にすると、逮捕令状を取り、翌日未明、BをA殺人容疑で逮捕した。
これを聞いて飛び上がったのが、早川署長だ。さっそく吉田刑事を呼び出すと、怒鳴りつけた。「どこからどう見てもただの病死を殺人だと?」 署長は立派な机をバンと叩いた。
「もしこれが事件じゃなかったらどうするつもりだ!」
「いやいや」と吉田刑事は落ち着き払った顔。「間違いなく殺人です。署長、刑事課の者を連れてきてもよろしいでしょうか。殺人事件であることをここで証明いたしましょう!」