苦い文学

天の階層

仏教の説くところによれば、私たちの世界は大きく三つの層に分けることができるそうだ。

いちばん下は欲界と呼ばれる層だ。欲にとらわれているからこの名がついた。私たちが暮らす地上階はこの欲界に含まれている。

欲界の上には、色界と呼ばれる層がある。「色(ルーパ)」というのは、物質のことであり、色界とは、欲界のように欲にまみれてはいないものの、物質性をいまだ脱却してはいないレベルのことをいう。とはいえ、それでも、私たちのいる地上階よりもはるかはるか上の階にある。

そして、物質に対する欲望も、関係もいっさい失った最上層が無色界だ。無色界はすべてを超越した階層であり、ありとあらゆる最新設備がそなえつけられている。

欲界・色界・無色界はそれぞれ、さらにいくつもの階層に分けられる。どれくらいかあるかは、はっきりとはわからないが、少なくともあわせて二十八階はあるだろうという説が有力だ。

階数は諸説あるにせよ、重要なのは、上の階に行けば行くだけ、純粋になっていく、ということだ。

もっとも、これはあくまでも昔の話。現在では、上のほうの階はみな、投機目的の裕福な中国人に買い占められてしまっている。