それはなんの変哲もない直線道路なのだった。ずっとまっすぐで視界を妨げるようなものはなにひとつなく、ただ信号機のある横断歩道と、信号機のない横断歩道が3つずつあるだけだった。
飛ばすような道路ではないのだが、ときおり暴走車が出現して悲惨な事故を引き起こした。制限速度 40 キロを遥かに超えて、120、いやときには 180 ものスピードで暴走し、脇道から進入してきた罪のない自動車を破壊し、横断中の小学生の列を蹴散らすのだった。
どうしてこの道路で暴走車が発生するのか。警察は取り締まりを強化し、スピード違反がないか重点的に監視を行ったが、それでも車は暴走を始めた。道路や周囲の環境に問題があるのではないかと、専門家を連れてきて検証をさせたが、なにひとつはっきりしたことは分からなかった。
私は当時この道路のある市の隣の市に住んでいたこともあり、不思議に思っていた。そこで、このような不可解な事件となるとがぜん能力を発揮する友人に相談することにした。
友人がLINEで求めてきたのは、道路の写真をたくさん、そして写真の撮影時間や位置といった情報などを保持したまま送ることだった。私はその通りにした。すると1時間も経たないうちに、返信が来た。
「信号機の信号が変わるタイミングを変えること、信号機のない横断歩道を廃止すること」
その理由を聞くと、こんな答えが返ってきた。
「写真の情報を総合して、3つの信号が変わるタイミングを計算すると、日に1回は全信号が黄色になる時間帯があることがわかった。原因はこれだ。赤はストップ、青はゴー、黄色はアクセルを踏め、だからね。また、信号機のない横断歩道でも、ドライバーは必ずアクセルを踏むことになっている。
「わかるだろうね。全信号が黄色となる時間帯にこの直線道路を走る車が、立て続けに6回アクセルを踏んだら、どんな速度になるか!」