苦い文学

皇紀2684年の荒野(中編)

【PART 3 ジャーナリスト稼業】
週刊パンチ編集部 ——東京、ジャパン
(高級週刊誌の編集部の様子。水着のグラビアがあちこちに貼られている)
編集長(記者たちに)「さあ、愛子さまを褒め称えるネタを探してこい!」

外村記者「編集長っ! 今週、愛子さまの特集号を出すってのにまたですか?」

編集長「バカ言うな! 読者はもっともっと欲しがってんだよ! 読者、いや国民が欲しいものを提供するのが俺たちジャーナリストだってことを忘れるな!」

外村記者(聞こえないように小声で)「ちっ、まともなジャーナリストなら競馬やパチンコの取材をさせろよな」

編集長「おい、外村! なんか言ったか?」

外村記者「いえ、いいえ!」

編集長「お前はさっそく宮内庁の張り込みだ。とくダネを引っ張ってくるまで帰ってくるな!」

外村記者「はいはい、わかりましたよ!」(としぶしぶ外に出る)

【PART 4 狙われた “安全弁”】
(深夜の宮内庁の地下施設)
技師(モニターの前であくびして)「ふああ、まったく監視業務も楽じゃねえや。しかし、原田所長がカリカリしてるからな、ちゃんとチェックしなきゃ……」

(コンピュータで設備の安全状況の確認をはじめる。終わると、別の画面を開いて、障害物を除去して女性を裸にするゲームを始める)
技師「お、あとちょっと!」 (その瞬間、画面が切り替わり、どくろマークが浮かぶ)

技師「おあっ。な、なんだ!」

(コンピュータがブラックアウトし、緊急アラームが鳴り響く。場面変わって……)

政府官邸特別対策室
(岸川首相に事態を報告する石部長官)
石部長官「反日勢力のハッキングによりRRCS(皇室敬意制御システム)のコントロールが奪われ、安全弁が破壊されました」

岸川首相「するとどうなるのだね」

石部長官「ご安心ください。すでにハッカー集団からシステムは奪還しました。これから慎重に圧を下げれば対処可能かと……」

原田所長(口を挟んで)「いやっ、このままだと爆発の可能性があります! 皇室への敬意がヘイトに逆転し、東京中が皇室ヘイトに汚染されてしまいます!」

岸川首相(驚きのあまりメガネがずり落ちる)「な、なんだと! それでは愛子さまを利用した政権浮上策も無理ではないか!」

原田所長「それどころではありません! これ以上ヘイトが拡散すれば、皇族がみなアメリカに行ってしまうでしょう!」

岸川首相「た、ただちになんとかするんだ!」

原田所長「そのためにはハッカー集団に破壊された安全弁の修復が必要です」

岸川首相「すぐに取りかかるのだ!」

原田所長「ですが、現在、施設内にヘイトが充満して、危険な状態なのです。外部から安全弁に空いた穴を塞ぐことができればいいのですが、そんなことをできるのは一流の、いや超がつく一流のスナイパーだけでしょう……」

岸川首相「むむ……」(次号に続く)