苦い文学

マルじい

吉田五郎は、心に深い傷を負ったせいで、妖怪マルじいになってしまった。

何年も浪人してようやく大学に合格し、何歳も年下の同級生たちと一緒に青春を謳歌しようとした矢先、五郎も加わるグループLINEでこんな誤爆が発生したのだ。

「吉田さんがまた《。》使ってたぜ」と年若い仲間のひとり。

「マルじいwww」と別の仲間。

メッセージはすぐに削除されたが、それでも五郎が、自分が仲間たちに「マルじい」と呼ばれていることを知るのには十分だった。LINEのメッセージで「。」を使っていたからだというのもすぐにわかった。それを若い仲間たちが陰で笑いものにしていたのだ!

五郎はガンと頭を叩かれたような気分になり、即座にLINEグループから抜けた。いや、アプリを削除すらした。そして、悔し涙にくれ、叫んだ。

「ちくしょう!。 ちくしょう!。」 その日を境に五郎は妖怪マルじいへと変身した。

もっとも、妖怪マルじいは現実世界にはいない。ネット空間をさまよっては、「。」なしの文を見つけだしては、勝手に「。」をつけてしまうのだ。

「あっ、僕のメッセージに《。》が! ダサっ!」「私のツイート(現ポスト)に《。》が! こわっ!」

こんなふうに若者たちを困らせるのがマルじいの楽しみだ。もしもみなさんのメッセージが勝手に「。」で終わっていたら、耳をすましてほしい。きっとマルじいの笑い声が聞こえるはずだから。。。。。。