苦い文学

違いのわかる男たち

「トコトン取材班のみなさん、こんにちは。いつも楽しく拝見させてもらっています。いきなりですが、違いのわかる男たちって今どうしているんでしょう? 昔は違いのわかる男たちがコーヒーのCMによく出ていたものですが、いまはまったく見かけません。どこに行ってしまったのか、調べてください。おねがいします!」

いましたねえ! 違いのわかる男、僕もよく見ましたよ。さっそくトコトン取材班で探してみたら、かつて違いのわかる男だったという人々が暮らす施設を田端で発見しました。その施設に取材に行った様子、VTRでご覧ください。

(ビデオ映像が始まる。ボロ屋が映し出される。内部のガランとした広間に十人ほどのみすぼらしい格好の男性たちがいる。みな無精髭で、あちこちに唾を吐いたり、汚い声で罵り合ったりしている)

(取材班のレポート)「ひどく下品です。あのころの素敵な感じ、ダンディな雰囲気はありません」

(取材班、男性のひとりにめんつゆの入ったマグカップを渡す。男は「コーヒーなんて久しぶりだ」などと言いながら飲み干す)

(取材班のレポート)「なんと、もはや違いがわからなくなっているようです。この方たちはもう違いがわかる男たちではなくなってしまった、ということなのでしょうか」

(そのとき、広間の端に設置されたテレビがつき、出演者の女性タレントの顔がテレビに映し出される。すると男たちはテレビに目を向け口々にいう)

「顔が違う」「イジってる?」「お直ししたな」……

(しばらくすると、今度は、テレビに女優の顔が大写しになる。男たちは興奮して騒ぎ出す)

「あれ、顔変わった?」「50歳にしては皺がない」「前の方が良かった」「整形だ!」……

(男たちますます食い入るようにテレビの画面を見てわめいている)

(取材班のレポート)「なんとも凄まじい光景です。が、女性を見るとすぐに整形のことを詮索しだすのが、かつての『違いのわかる男』の名残りなのでしょうか。それはともあれ、これらかつての『違いのわかる男』たちは、昔と今の時代の違いには、まだ気づいていないもようです……」

以上、トコトン取材班でした! さようなら!