苦い文学

日本のジーリー

イギリスのSF作家、スティーブン・バクスターは一千万年にもおよぶ宇宙史で知られる。その壮大なクロニクルで、もっとも興味深い存在がジーリーという宇宙生命だ。

ジーリーの文明は人類よりもはるかに進んでいて、銀河を動かすことなどお茶の子さいさいだ。

万能無敵かと思えたジーリーだったが、恐ろしい敵に直面もしていた。宇宙を衰えさせる力が増大しつつあったのだ。宇宙が衰え、滅びるということはジーリーが滅亡するということを意味する。そこでジーリーはこの勢力と激しく戦った。だが、結局のところ負けてしまう。ジーリーができることはといえば、もはやひとつしかなかった。

この宇宙から逃走して、別の宇宙に移住することだ。

この目的のためにジーリーは宇宙ひもでできた巨大なリングの建設を始めた。千光年にもおよぶこのリングの中央部にはブラックホールがあり、これを使ってこの宇宙から脱出しようというのである。

私はジーリーのこの物語を読んだとき、なにかに似てるな、と思った。リング……逃げる……なんだろう。

しばらく考えたのち、大阪で巨大なリングを建設して万博まで逃げ切ろうとしている日本維新の会だと思い当たった。