苦い文学

いつか断食する日

ラマダンというのはひと月のあいだ、日の出から日没まで断食するイスラムの行事だ。今週、チュニジアにいた私はこの断食に1日だけ挑戦してみることにした。

半日飲み食いしないなど、たいしたことがないように思えるが、「するな」といわれて我慢するとなると話は別だ。私にはまったく自信がなかった。ともあれ、断食は午前5時前に軽い朝食を食べたのちスタートした。これから午後6時半過ぎまでなにも口に入れてはいけないのだ。

その日は車であちこち移動する日だった。12時を回ったころ、同行してくれたチュニジア人の友人が私に聞いた。

「ジュースでも飲むか。断食は少しずつ体を慣らしていくものだぞ」

「いや、結構だ……」と私。

しばらく経つとまた聞いてきた。

「菓子でも食べるか。無理するなよ」

「いや、結構だ……」

それから私たちは車を降りて、遺跡を訪問した。山の上にあるので、けっこう歩く。遺跡を見終わったのち、友人が私に言った。

「俺たちはこれから礼拝をするから、お前はこのカフェに座ってジュースでも飲んでなさい」

「いや……水をください……」

その日は暑く、熱中症が怖くなってきたのだ。口を湿らす程度に、と思っていたが、割合にがぶ飲みに近くなった。

けっきょくその後、あちこちでお菓子をもらったりして、お腹いっぱいになってしまった。

翌日は誘惑にも負けず、最後まで断食した。日没後はすぐ食事になる。私は20分ぐらい前から食卓に座って、「ゴーサイン」が出るのを待っていたのだが、この時間がいちばんつらかった。