苦い文学

秘策

過激な動物愛護団体は、日本人に捕鯨をやめさせるために、長年活動してきた。だが、知恵のかぎりを尽くしてイヤがらせや過激な妨害活動を続けてきたのに、まったく効果が上がらなかった。

そこで団体のリーダーは、身分をいつわって日本に入国し、何ヶ月もかけて日本人を徹底的に研究した。

そこまでした甲斐あってリーダーはついに秘策を得た。日本から団体のメンバーに連絡し、さっそく実行に移すことにした。

過激な動物保護団体はその潤沢な資金を使って、炎上まちがいなしの鯨画像を合成したのだった。

鯨が喫煙禁止区域でタバコを吸っている写真、鯨たちが旅館の障子を突き破って顔を出している写真、鯨が被災地でブランド物を身につけているセレブ写真……。

それから、それらの写真をありとあらゆるSNSで拡散した。

すると、たちまち炎上が始まった。写真を見た日本人が怒ることといったらなかった。

SNSはこんな批判で溢れかえった。

「鯨のファン辞めた」

「鯨の入った料理はもう食べない」

過激な動物愛護団体のリーダーは秘策の結果におおいに満足して日本を出ていった。