苦い文学

あの世の酒

「酒をやめるか、飲んで死ぬか」と脅されていた友人が死んだ。酒をやめられなかったのだ。

だが、死亡と診断されてから、1日後に息を吹き返した。そして、あの世で見た事柄について語ったのち、今度は本当に死んだのだった。

彼の言葉により、私たちはわずかながら死後の世界について知ることができた。彼が語ったことはおおよそ次のような事柄である。

・天国では親しい人々が出迎えてくれる。
・新人歓迎の酒盛りが始まる。
・手に持った盃に酒が次から次へと注がれる。それを必ず飲み干さなくてはならない。なぜなら、自分はこの天国ではいちばんの若輩者であり、先に死んだ先輩からの酒を断ることはできないからだ。
・そして、先輩たちは無限にいるのだ。
・注がれる酒は本当の酒だ。「天国のお酒も酔っ払うんですね」というと、「酔わないとしたらなんで飲むのか」と怒られてさらに飲まされる。アルハラがひどい。
・周りは酔っ払いばかり。というか、全員が酔っ払っている。
・酒は、ビールやサワー、ウィスキーはなく、まずい清酒のみ。その理由を聞くと「安い酒でも天国ではバカ高いのだ。富士山のジュースが高いのと同じだ。高い酒が飲みたければ、生前、善行をたっぷりしとくんだったな」と嘲笑。
・天国なので体を壊して死ぬこともできない。自分は永遠にこのまずい酒を飲み続けるのだということがわかってくる。

これらの事柄を語ったのち、彼は、私たちの目の前で再び息絶えた。恐怖と苦悶に満ちたその顔つきにはゾッとさせられた。

その後、私たちはいつものくせで「あの世で、先に逝った仲間たちとゆっくり酒を酌み交わしてください」と言ってしまった。たぶん悪いのはこれだ。