与党の青年議員たちが私たちの地区に視察にやってきた。視察のコンセプトは多様性だという。
私たちはまず青年議員たちを駅前広場に案内した。どこもかしこも酔っ払い、宿なし、物乞いでいっぱいだ。青年議員たちは感心した。
「ほほう、多様な生き方があるのですな」
次に私たちは粗末な精神病院に連れて行った。そこでは、さまざまな精神病患者が喚いたり、叫んだり、泣いたりしていた。「これが癲狂院ですか、いやはや多様なものですな」と青年議員たちは感心することしきりだ。
次の視察場所に向かう途中、私たちは道端で死んでいる人に何人もでくわした。医療の医の字も受けることができないため、こうやって路上で死んでいくのだ。青年議員たちときたら「生き方も多様なら、死に方も多様というわけか、勉強になるぞ」と大喜びだった。
そして、私たちは青年議員団を地区でもっとも暗く危険な場所にお連れした。そこでは、未成年から老人までが、自分の体を安価で売っているのだった。青年議員たちの興奮はこの日いちばんで、「ここで見られる性の多様性は参考になるな」などともう興味津々だ。
なかには感激のあまり、セックス・ワーカーたちにチップを渡す青年議員まで出てきた。ある議員は口移しでチップを渡し、ある議員はお尻を撫でながらチップを渡し、また別の議員は裏金として渡すという具合で、私たちは議員たちのチップの渡し方の多様性に驚かされたのだった。
ちょうど青年議員たちの視察の最中に、数名の人々がやってきて、子どもたちに話しかけだした。青年議員たちがなんの人々かと聞くので、私たちは答えた。
「あれは、なにかの NGO の人々で、体を売る子どもたちの悩みを聞いたり、支援したりして、なんとかしてこの場所から保護しようとしているのです」
すると青年議員たちの怒ること怒ること。「多様性を無くそうとするとはけしからん!」 「まったくなんという偽善者どもだ!」 「品位に欠ける振る舞いだ!」
与党の青年議員たちはひとしきり怒ると満足したのか、視察を早々に切り上げて、夕食の多様なメニューを楽しむためにホテルに向かっていった。