苦い文学

花束

医師たちによればもって数日ということだった。そんな状態にもかかわらず、老人の家族は誰ひとり来なかった。それも、彼がこれまでしてきたことを考えれば当然だった。

「看護婦さんよ」 私がやってくると老人は言った。彼は絶対に「看護師」とは言わなかった。たとえ私が男でも。彼は人をいやな気持ちにさせることならなんでもした。「まだそいつは来やがるのか」

「ええ、今日も花束を持ってきました」 彼はいまいましげに叫んだ。「ちくしょう! なんだってんだ!」

この世のすべての人間からきらわれ、憎まれ、蔑まれて死にたい。それが彼の望みだった。そして、それにふさわしいあらゆる悪事を彼は成し遂げてきたのだった。だがいま、この「花束」がそのすべての業績を台無しにしようとしていた。彼は陰険な目つきで私に言った。

「それで、俺が言った通りにしただろうな」

「もちろん、目の前で花束を踏みにじり、罵倒しました。ですが、その人は明日もまたくると言っていました」

「そいつをぶっ殺してやってもよかったのだ! よし、明日来たら、そいつを死ぬほど酷い目に合わせてくれ!」

その日の夜、老人の病状は急に悪化し、昏睡状態に陥った。彼がわずかなあいだ意識を回復したのは、翌日の昼頃だった。よく言われることだが、まるで炎が消える寸前に一瞬強く輝くのと同じだった。

老人は私がいるのを見ると弱々しい声で尋ねた。「そいつは……また来たのか……」

私は彼が聞き取れるよう大きな声で言った。「ええ、来ましたよ! 花束を持って、あなたを愛していると!」

これを聞くと老人の目にちらりと怒りが浮かんだ。だがたちまち、その目はにわかに温和になり、唇に笑みが漂った。

「花束か……悪くない」

それが老人の最後の言葉だった。

この世でもっともきらわれ憎まれ蔑まれている男に、花束を持ってくる人間などいようはずもない。老人の人生をかけた望みの実現をまんまと阻止したことに満足しながら、私は遺体の処置に取りかかった。