やあ、お前がこの世を去ってから、もう1年経ったんだ。信じられないね。実は、まだお前がひょっこり顔を出しそうな気がしてるよ。
俺はずっと考え続けていたんだ。お前がどうして死を選んだのかって。いや、それはわかってるんだ。お前の遺書にも書いてあったからな。だけど、死んでまでして証明することかどうか、俺には今もわからないんだ。
もちろん知っているよ。お前がこの世の不合理をとことん憎んできたってことを。迷信、デタラメな言説、陰謀論にお前ほど激しく立ち向かっていった人間を俺は知らない。
そして、お前が最後に選んだ敵についても、遺書に書いてあったね。「人生に無駄などない」と。お前はこのテーゼにもっとも強烈な否(ノン)を叩きつけた。「人生は無駄ばかりで、それはなにがあろうと永劫不変に無駄なのだ」と。
お前はこのアンチテーゼを証明するために、尊い命を投げ出した。そうすることによって、つまり、自分の命を無駄に蕩尽することによって、お前は人生のすべてが無駄でありうるということを示したのだ。それこそ身をもって、だ。
俺はお前のしたことをどう評価していいのかわからない。ずっとずっと考えてきたけど、まだわからない。だけど、最近、ひとつだけ俺はお前に言えそうな気がしてきたんだ。それを、遅まきながら、お前への手向けにさせてほしい。
俺はお前の死を無駄にしない、と。