苦い文学

「あ」の間

「あ」とはなんだろうか。私がわからないのは次のような「あ」だ。

学生が別の学生に問題を出す。問題を出された学生はいろいろ考えた末、「答えは a です」と答える。

すると出題した学生はこう答える。「あ、正解です」 間違いでも同じだ。「あ、違います」

いったい、この「あ」はなんなのか。別の例もある。コンビニで商品の会計をしていて、店員にこう問いかけられるのだ。

「袋はいりますか?」

「あ、いりません」

もちろん「いりません」だけでもいいのだが、どうしても「あ」が入ってきてしまう。

また、こんな場合もあろう。

「テーブルのお菓子好きなの持っていってください」

「あ、いいです(=いらないです)」

考えてみると、この「あ」が出てくる場合、「あ」の後に出てくる言葉はあらかじめ用意されていることが多いようだ。つまり、最初の例では、正解にしても間違いにしても、相手の発言を聞く前にどう答えるかは決まっている。また、コンビニの例では、袋が必要かどうかは、たいていの場合、店員に質問される前にわかっている。

なのでその分、相手の発言に対する返答のタイミングが速くなってしまう可能性がある。ヘタをすると「食い気味」にすらなってしまうかもしれない。たとえばこんな感じだ。

「答えは a ……」「間違いです」

「テーブルのお菓子好きなの持っていっ……」「いいです」

これは失礼だ。これを避けるためにあえて「あ」で間をおいて、「相手の発言を受け止めた感」を演出することで、返答を後にずらしているのだと思う。

このずれを「あ」の間と呼ぶべきであろう。

あ、あくまでも私の個人的な考えです(この「あ」は何か付け足したいときの「あ」で、間の「あ」とは違う)。