苦い文学

高学歴プア

私は名の知られた大学を卒業し、大学院に進み博士号まで取ったが、年収が100万円にもいかない。いわゆる高学歴プアだ。

そんな悲惨な状況を見かねて、友人が「いい仕事がある」と声をかけてくれた。

「有名大学の大学院出身で低収入の男性」をとある富豪が探しているというのだ。しかも、週に1回、富豪の手伝いをするだけでいい。修士なら月に10万、博士なら15万だ。

興奮する私をみて友人は言った。「だけど、本当はその人の手伝いが仕事じゃないんだ」

「なにかヤバいことでも?」

「いや」と友人は笑った。「そうじゃなくて、本当の仕事の内容はプライドを捨てることだ」

「というと?」

「その富豪はね、経済的な事情から大学に行けなかったのだが、努力して巨万の財を築いたのだ。それで彼はこんな確信を抱くようになった。大学教育は無意味で、学問とはバカがやることだと。この反知性主義的確信を補強すべく、この度、彼は高学歴プアを募集することにしたのだ」

「あ、というと、あの一流コメディアンがアテンド芸人を通じて『女弁護士』や図書館の『女司書』を急募しているのと同じような……」

「そのとおり。彼は高学歴連中を服従させるのをなによりもの楽しみとしているのだ。だから、つらい思いをすることも覚悟しなくてはいけないよ。それでもいい?」

「もちろん! それで食いつなげるなら、どんな屈辱だって!」

そして、私は友人を通じてその富豪に履歴書を送ってもらったのだった。

数日して友人から電話がかかってきた。「ごめん。ダメだった」

「えっ、そんな!」

「だって、ハーバードで Ph.D. を取って、年収30万の人が応募してきたんだぞ……富豪はもう大喜びだ」

私はこれを聞くと切なくなって電話を切った。そして、数ヶ月後、私はその友人と会う機会があったので、例の富豪のバイトについて尋ねてみた。

「ああ、あのハーバードね」と友人は言った。「実は高卒だってことがバレてさ」

「じゃあ、クビか」

「いや、富豪はますます大喜びだよ。高学歴どもにこんなことはできやしないだろうってね」