私たち亡者は閻魔大王の前に引き出された。これからお裁きが始まるのだと、鬼たちが告げた。
まず私たちの中から一群のみなりよい人々が引っ立てられた。私たちはこれらの人々を見て色めき立った。生前、芸能界やスポーツの世界で活躍したセレブたちだったからだ。
閻魔大王とセレブたちとのあいだに、お地蔵さんたちが立ち現れ、これらのセレブが地上にいたあいだ、どれだけ良いことをしたか弁じ始めた。多くの人々に元気と喜びを与え、あちこちで大金を使って経済を回した。貧しい人々に施しをし、被災地ではたくさんの支援活動をした。のみならず、見捨てられた犬猫のためにも勇敢に戦ったのだ。
閻魔大王は聞き終わると微笑みながら言った。「これらの善人たちを天国に丁重にご案内せよ!」
次は私たちの番だった。だが、私たちのために弁じてくれる地蔵はいなかった。閻魔大王は手元の書類にざっと目を通すと、苛立たしげにこう宣告した。
「お前たちは、四六時中自分のことばかり考え、他の人々を助けもしなかった。お前たちの収入ときたらわずかで、寄付や支援などしたこともないのだ。こんな利己的でがめつい人間は地獄行きに決まっている。鬼たちよ、犬猫にも劣るこいつらを地獄に突き落とせ!」
こうして私たちは地獄で、鬼たちに永遠に責め苛まれることになった。苦しく痛く絶望しかない時間が、宇宙の終わりまで続くのだ。
ときおり、セレブたちが天国から私たちのところに降りてくる。セレブたちは私たちのために豚汁やお菓子を運んできてくれる。配り始められるやいなや、私たちは我先に奪い合って、一口で飲み込む。
そのあいだ、セレブたちは鬼たちと親しげに会話し、握手などしている。
私たちにはもうわかっている。セレブもまた鬼なのだ。