苦い文学

密輸業者の分類

牧師によれば「家具でもなんでも日本製のものは中古でも品質がいいので、みんな欲しがる」というが、私にはわざわざ密輸するほどのものではないように思えた。

だが、今回は見ることができなかったが、この密輸拠点では日本の中古車も扱われているとのことで、おそらくこれがメインなのであろう。

さて、この拠点は国境の川に面していて、ビルマ側には「Grand Myawaddy」という大きな建物が立っている。これはビルマ側の密輸組織の経営するカジノだそうだが、現在は閉鎖されているという。

うっかり写真を撮ろうと携帯を取り出した私を、同行した友人、非常に温厚な人だが、その彼が血相を変えて注意したのだった。

私たちはいくつか店を回ったが、そのうちのひとつで友人と牧師はバッグを買うことにしたようだった。2人が品定めをしているあいだ、私はその店の倉庫をぶらぶらと見て歩いた(店内は写真を撮ってもいいというので私は何枚か撮らせてもらった)。

日本製の棚が並んでいるが、なによりも面白かったのがその棚に並べられた置物類だった。北海道の熊の木彫りから、沖縄のシーサーまで、あるいは、伝統的な民芸品から得体の知れぬキャラクターまで、日本中のありとあらゆる人形が、どの棚にもびっしり詰まっているのだ。

しかも、木彫りの熊なら熊、というように同じものがサイズ違いでまとめられている。博多人形のコーナー、ファンシーなキャラのコーナー、ダルマや赤べこのコーナー……戦後の日本人の想像力が生み出したありとあらゆる造形が系統的に分類され展示されているのだ。まるでそれ専門の学芸員がいるのではないだろうか。

とくに私がうなったのは、47人の赤穂浪士の豆人形がずらりと勢揃いした民芸品が、「二十四の瞳」の先生と子どもたちの像と同じ棚に置かれていたことだ。

これもこの「学芸員」の斬新な見識によるものであろう。