苦い文学

運び屋

ビルマの民族のうちのひとつ、カレン人の友人とタイに行くことになった。

訪問先は、タイ・ビルマ国境のカレン人地域だ。ビルマ国内の戦争の結果、逃げてきた人々で、難民キャンプで暮らしている人、在留外国人として働いている人、タイ市民として暮らしている人などさまざまだ。

私の友人は在日カレン人コミュニティのリーダーのひとりで、国境の同胞に日本からささやかな支援金や贈り物を届ける、というのが今回の訪問の目的のひとつだ。

つまり、普通の旅よりも荷物が多くなるわけだが、今回の飛行機は預け手荷物がひとり20キロまでだ。それで、友人は10キロほど私に頼んできた。

タイ往復の航空券代を払ってもらっている身だ。運び屋を断ることなどできない。

もっともヤバいものなどなにもない。カレン人団体のロゴが入ったTシャツと日本製の柄物の生地だ。

Tシャツはみんなに配るためで、生地は女性の伝統的な腰巻き用だ。これは日暮里の繊維街で買ったもので、ビルマの女性へのお土産として人気の品だ。

さて、私は自分の物と合わせて20キロになるようにパッキングしたが、空港のチェックインで24キロであることが明らかになった。

私は緊張してカウンターの人の反応をうかがう。なにも言わない。「よかった、そのまま通してくれる」と思いきや、フェイントで「追加料金8000円です」ときた。

あわててバッグから自分の本やらなんやら重たいものを取り出してパスした。運び屋稼業も楽じゃない。