苦い文学

一緒にタイに行きましょう(1)

日本在住のカレン人難民の友人が、かねてから私とタイに行きたいと言っていた。

カレン人は多民族国家ビルマ(ミャンマー)の民族のひとつだ。ビルマでは長らく民族間の問題が続いていて、その結果、日本にも多くのカレン人が暮らしている。

そのカレン人がどうしてタイに行きたがるかというと、タイには多くのビルマ出身のカレン人がいて、難民キャンプもある。また、タイ・ビルマ国境はカレン人の政治組織・軍の拠点となっていて、カレン人の文化と政治の中心のひとつでもあるからだ。

この国境地帯には、私はかつて何度も行ったことがあるが、最後が 2014 年 12 月だ。この時は短い滞在だったが、カレン人の老人に歴史についてインタビューしたりした。

さて、私とタイに行きたがっている友人は日本に住むカレン人のリーダー格のひとりで、私もずいぶん世話になっている。

だが、彼と一緒にタイに行くのは、現在の私の状況では難しい。それで私はいつも「そうですね。いつか行けたらいいですね」と適当に答えていた。

だが、彼は適当に考える人ではなかった。去年のある日、その「いつか」を提示してきたうえ、飛行機代も出す、とまで言ってきたのだった。