近い将来、日本人たちは、この日本という国を捨てるべきだと考えはじめるだろう。
「私たちはいつまで地震に打ちのめされねばならないのか。津波の悪夢にうなされなければならないのか。いつまで涙を流さなければいけないのか。私たちはもはやこの島にはいられない。地震も津波もない土地で、幸せに生きるのだ」
「そうだ、どんなに酷い土地であろうと、揺れさえなければ、私たち日本人はなんとかやっていける!」
国家プロジェクトとして、さっそく新しい日本の候補地探しが始まった。世界中のあらゆる無人地帯が徹底的に調査され、その結果、ついに2つの候補地が浮上した。
赤道直下の灼熱の不毛地帯と、極北の広大な永久凍土だ。
どちらも、その地下にはいかなる断層もなく、少なくとも数万年の間、揺れた形跡はなかった。
そのいっぽう、2つの候補地には重要な違いがあった。不毛地帯を選ぶ場合、日本はその所有国に天文学的な金額を支払って購入しなくてはならなかった。いっぽう、永久凍土のほうは、その所有国に年ごとの使用料を払わねばならなかった。
「つまりこういういうことだ」と人々は叫んだ。「持ち家か、賃貸か」
永遠に結論の出ないこの問題をめぐって、日本中が真っ二つに割れた。いたるところで議論が繰り広げられ、そのうち激しい天災がやってきて、日本は沈没してしまった。