お正月は千葉県内房の舞浦に遊びに行った。
なんにもないところだが、漁村らしい古い町並みがそこここに残っていて、まるで『男はつらいよ』に出てきそうだった。港近くの土産物屋で干物を買い、食堂で新鮮な魚を味わった。
近くに舞姫神社という古い神社もあり、せっかくなので初詣にと寄ってみることにした。参拝者の列に並んでお参りを済ませ、境内をぶらぶら歩いていると、天女のような石像がある。「弟橘媛(おとたちばなひめ)」と刻まれていて、その脇の案内板にこんなふうに書かれていた。
「その昔、相模から上総に渡ろうとした日本武尊が、嵐に襲われ海上で立ち往生していたところ、その妻の弟橘媛が海神を鎮めるために、入水しました」
「その後、弟橘媛の袖が流れ着いたのが袖ヶ浦、衣服が流れ着いたのが富津(古くは布流津)、その腰巻きが流れ着いたのがこの舞浦です(古くは巻浦)。また、日本武尊が妻を偲んで詠んだ歌《君さらず袖しが浦に立つ波のその面影をみるぞ悲しき》の《君さらず》が木更津・君津の由来になったと言われています」
「舞浦市民有志は、尊い命を自ら絶って日本武尊を救った弟橘媛を記念して、寄付により、令和5年3月にこの像を建立しました」
そして案内板の末尾はこんなふうに締めくくられていた。
「*厚生労働省や自殺の防止活動に取り組む団体は、嵐を鎮めたいときは自分だけで解決しようとするのではなく、専門の相談員に相談することを呼びかけています」