「経済回せ!」が私たちの合言葉。それこそが、この停滞しきった日本を甦らせるたったひとつの方法だ。
経済が回れば、金が動き、人々が潤う。金が血のように日本全体をめぐり、私たちに生命を与える。
だが、経済をどうやって回せばいいのだろうか? 「そもそも経済が回るものなどと知らなかった!」 こんなふうに叫ぶものすらいるありさま。
有名な経済学者が提案した。「経済を回すには富裕層の力がどうしても必要だ。なぜなら、経済を回すには経済力がモノを言うからだ」
私たちは富裕層に頼み込み、その力を借りて回すべき経済の開発に打ち込んだ。そして、それはついに完成した。経済を回す時がやってきたのだ。
私たちは管制センターに陣取り、モニターに映された巨大な構造物を注視した。準備万端だ。秒読み開始!
10、9、8……。エネルギーが満ち、経済機構がうなりはじめる。5、4、3……経済指数が限界まで上昇する!
2、1、回せ!
ミシミシと地響きを立てて経済が動き始める。回った! 成功だ! 私たちは歓声を上げ、互いに抱き合った。
そして、回り出した経済は私たちをバリバリと巻き込み、富裕層以外のすべての人々を挽肉にすると、どんな災害よりも激甚に日本を破壊して、海の底に転げ落ちていった。