苦い文学

殺める人々

コロス派とアヤメル派の間で激しい論争が持ち上がった。コロス派というのは、人の命を奪うのはすべて「殺す」というべきだと考える人々だ。いっぽう、「殺す」という語は認めつつも、やむを得ぬ理由のある場合は「殺める」を使うべきだというのがアヤメル派だ。

アヤメル派が「卑劣な殺人と斟酌すべき事情のある殺人は区別するのが当たり前ではないか」と声高に主張すると、コロス派は「『殺す』より『殺める』のほうが高級だということがあろうか。どちらも同じ行為なのに。それに、殺人の理由を判断するのは裁判だ」と反論する。

アヤメル派はさらに「日本語の豊かさを知らないとはまったく無教養な連中だ。もしかしたら日本人ではないのかもしれない」と攻撃する。これに対し、コロス派は「人情刑事ドラマの見すぎだ。言葉の情緒に流されると、現実を見失うぞ」と反撃し、ひとこと付け加えた。「いったい、この人たちは、自分が『殺められ』ても文句は言わないということだろうか」

この皮肉がアヤメル派を激怒させた。

さて、アヤメル派はいつもニコニコしているのに対して、コロス派はわりあい厳しい顔つきだった。そんなわけで、人々はアヤメル派を応援し、アヤメル派はどんどん大きくなっていった。

そして、ある朝早く、アヤメル派は武器を持ってコロス派の家を一軒一軒まわり、全員を殺害した。

すべてが終わると、アヤメル派は大声でこう人々に告げた。

「私たちは彼らを殺め、そして殺められた彼らは、自分たちがいみじくも見越したように、文句ひとつ言わなかった」と。