苦い文学

見知らぬ飛行物体

シアトル発成田行きのジェット旅客機が太平洋上空を飛行しているとき、その前方に奇妙な飛行物体が出現した。

それは銀色に輝く球体で、まるで重力などないかのようにジグザクに移動していた。そして、瞬く間にコックピットの前に接近し、機体ギリギリのところで停止した。それは不思議な音波を発しながら、その前をしばらく動き回り、やがてものすごいスピードで遠ざかった。

異様な光景に機長と副機長が呆然としていると、その飛行物体は再び目の前に現れた。そして、前回と同様に、不可解な音波とともに動き回り、一瞬のうちに消え去った。

未確認飛行物体はその後もこれと同じことをいくども繰り返した。最後は不意に上昇をはじめ、空のどこかで消滅した。最初の出現から時間にして約 10 分ほどの出来事であった。

無事にフライトを遂行し、成田に着いたとき、機長は副機長に、この異常な出来事を口外しないよう求めた。だが、副機長はこのような重要な事件は上部に報告すべきだと主張し、機長に対してその理由を問うた。

すると機長は当惑のあまり顔を真っ赤にして答えた。

「だって、見知らぬ飛行物体に上空で声をかけられたなんて知られたら、軽い機長だと思われちゃいそうで……」