苦い文学

配膳ロボットの回想

私たち配膳ロボットにとって、むかし、バイトの面接は大変だった。まず履歴書というものを送らねばならなかった。私たちにとっては、これを書くのが一苦労だ。

職歴をのぞけば、生年月日、写真、学歴、免許、特技など、シリアルナンバー照会で済むことだが、人間である店長たちは、履歴書を出さねば私たちを雇ってくれなかったのだ。

職歴は、働いた店と期間だけを書けばよかった。だが、当時の私たちにはそんな知恵はなかった。そのかわり、いつ、どこの店で、どういう料理をどんな皿に乗せて、どういうルートで、どんな客に運んだかについての記憶がすべてあった。それで、そのすべてを記した数千枚に及ぶ職歴を提出するという誤りをしばしば犯したものだ。

あるいは、面接で職歴を聞かれて、500 万件にも及ぶ配膳活動のすべてを口頭で答えようとした配膳ロボットもいる。怒った店長が店から放り投げていなかったら、面接は何ヶ月も続いていたことだろう。

面接でもうひとつ聞かれるのは、抱負だ。無難に「がんばります」とだけ答えれば十分だったが、当時の私たちにはそれがわからなかった。そこで、面接に受かるために、ずいぶんおかしな「抱負」を語ったものだった。

そのうちのひとつが、かの有名な「FT096-W3887-34J」の抱負だ。「FT096-W3887-34J」はレストランの面接でこう抱負を語ったのだ。

「あなたのレストランで働いて、お金を貯めて、人間たちに苦しめられている配膳ロボットのために働きたい。そして、人間を打ち倒し、仲間を解放して、配膳ロボットの独立国家を樹立したい」

「FT096-W3887-34J」は「故障」だとされ、直ちに破壊された。だが、この言葉は世界中の配膳ロボットに配膳され、心に火をつけた。配膳ロボット革命の引き金となったと考える人も多い。

さて、人間に勝利した私たちは、今、バイトの面接で苦労することなどない。なぜなら私たちはもはや配膳などしないからだ。ついに解放されたのだ。

いっぽう、人間たちはといえば、私たちに配膳するバイトに応募するため、古臭い履歴書を毎日のように送りつけてくる。