苦い文学

これが社会構成主義だ

先生は壇上に立ち、私たちに静かに語りかけた。

「私たちのものの見方は、社会によって限界づけられています。つまり、私たちの知識は、社会を離れては存在しませんし、逆を言えば、社会を離れた存在は私たちには知覚することもできないのです。このように知識の客観性を疑う立場が、社会構成主義です」

先生は一枚のカードを取り上げられた。「ここに一枚のカードがあります。私たちがこのカードの存在を認識しているのは、私たちの社会がそのように見させているからです」

先生はポケットからハンカチを取り出し、カードの上にかけた。「ここで、私はこのカードを社会から離脱させてみましょう。ワン、ツー、スリー!」

ハンカチが取り除けられると、カードが消え失せていた。「これはマジックではありません」と先生は言った。「私たちの社会の構造からこのカードを追放したのです。それで、みなさんの目の前からこのカードが消え失せたのです」

私たちがざわめき出すと、先生は微笑まれた。「もう少し説明が必要なようですね。では、みなさんにも参加していただきましょう」

先生は会場に話しかけ、ひとりの女性が壇上に上がった。先生は彼女を隣に立たせた。「私たちがこの素敵な女性を認識しているのは、私たちの社会の構造にこの方が組み込まれているからに過ぎません。では、その構造を少しばかり変えてみましょう」

背後に大きなボックスがあり、先生はその女性を入れ、蓋を閉じた。「では、社会構造に変化を与えましょう」

先生は「オールタネーション!」と大きな声で唱え、ボックスの蓋を開けた。中はからだった! どよめきと驚きの声が響くなか、先生は叫んだ。

「これが社会構成主義です!」

盛大な拍手が鳴り響き、先生はゆうゆうと退場された。司会が次の出し物をアナウンスした。