苦い文学

タバコのパッケージ

外国に行くと、タバコのパッケージが恐ろしい。癌に犯された肺の生々しい写真が警告に使われているのだ。だがそれでも吸ってしまう。

日本でもこのグロテスクなパッケージが導入された。いやだいやだと思いつつも、吸ってしまう。

最近では、パッケージに細工がほどこされるようになった。立体的になったのだ。タバコの箱を手に取ると、目の前に汚らしい臓器の3D映像が飛び出してくる。だが、吸わずにはいられない。

というのも肺がんになったのは別の人で、私はたぶん肺がんにならないだろうから。そう思ってタバコを吸い続けていたら、あるとき胸が苦しくなってきた。

なんでもない、と言い聞かせていたが、次第につらくなってくる。医者に行き、あちこちで検査した結果、肺がんだと告げられた。しかも、もう手の施しようがない。もって1ヶ月だ。

タバコなんて吸っていられる状況ではない。恐ろしい苦痛、死の恐怖。あのときタバコをやめていたら、と涙ながらに後悔するが手遅れだ。

やがて私は寝たきりになり、話すことも食べることもできなくなった。激しい苦痛から逃れるために私は眠り、暗い眠りから覚めるたびに、死が近づいているのを知る。そして、ある夜、ついに……

……ついに、タバコのパッケージは喫煙者にこんな幻を見せて警告するまでになった。だがそれでも吸ってしまう。