魔法などというとファンタジーの世界のものかと思うかもしれないが、現代の日本にも魔法は存在するし、魔法使いやその弟子もたくさんいる。
魔法使いになるためには、魔力を持たなくてはならない。この魔力は、現代魔法学では自己肯定感と呼ばれている。自己肯定感があれば魔法を使える。
魔法にはさまざまなものがあるが、現在おもに用いられているのは「引き寄せの法則」だ。この魔法を使えば、なんでも思うままに実現できる。
また、自在に富を生み出す錬金術も、魔法使いの多用する魔法のひとつだ。
ファンタジーでは魔法使いになるためには、弟子として修行を積んで、ランクを上げていかなくてはならないが、現代でも同じだ。セミナーや講習会、セッションやオンライン・ミーティングにせっせと参加して、師の魔法使いの教えを受け、「資格」や「免許」を取ることが求められる。かなりの出費を覚悟しなくてはならない。
また、書物も重要だ。ファンタジーの世界では、魔法使いになるためには、重厚な魔術の書を読みこなす必要がある。これらの書物は伝説の偉大な魔術師が書き残したのだ。
現代の魔法使いの弟子たちも書物から学ばねばならない。これらの書物は、ファンタジーの世界に比べると、薄くて、字も大きくて、安っぽい。たいていは、書店の「自己啓発書」のコーナーに並んでいる。たいして内容もないので何冊読んでも疲れない。
現代の魔法使いがこれらの本の中で、繰り返し語るのは、自己肯定感も引き寄せの法則も錬金術も実在するということだ。
私は長年の調査の結果、自己肯定感も引き寄せの法則も嘘だと結論づけた。だが、セミナーなどの参加費から判断するかぎり、錬金術だけは本物だと認めざるをえなかった。